概要

トランスファーゲートウェイでは、Loom DAppチェーンとイーサリアム・ネットワーク間のトークンを移転できる。 現在ERC721トークンのみのサポートであるが、今後近いうちにERC20トークン及びETHのサポートを追加していく。

トランスファーゲートウェイは、以下4つの主要コンポーネントから構成されている:

  • イーサリアム上のSolidityコントラクトゲートウェイ (メインネットゲートウェイ)
  • Loom DAppチェーン上のGoコントラクトゲートウェイ (DAPpチェーンゲートウェイ)
  • Loom DAppチェーン上のGoコントラクトアドレスマッパー
  • Oracleゲートウェイ (DAppチェーンノードのプロセス内、またはスタンドアロンプロセスで実行可能)

Diagram of ERC721 Transfer to DAppChain

ユーザーがイーサリアムアカウントからDAppチェーンアカウントにトークンを移転したい場合、まずはメインネットゲートウェイに移転することが必要だ。 するとデポジットイベントが送信される。 デポジットイベントはゲートウェイOracleにより検知され、DAppチェーンゲートウェイへと転送される。 その後DAppチェーンゲートウェイは、ユーザー(メインネットゲートウェイへトークンをデポジットした者) のDAppチェーンアカウントへとトークンを移転する。

Diagram of ERC721 Transfer to Ethereum

同じトークンをイーサリアムアカウントへと戻したい場合、ユーザーはまず引き出し保留中にするため、トークンをDAppチェーンゲートウェイへと送り返さなくてはならない。 この保留中の引き出しは、引き出しの署名やDAppチェーンゲートウェイへの通知を行うゲートウェイOracleにより検知される。 DAppチェーンゲートウェイはイベントを送信し、署名済み引き出しの記録を提出すれば、メインネットゲートウェイからイーサリアムアカウントへトークンの引き出しが可能であることをユーザーに通知する。

ハンズオンで学習したければ、続きを読むよりも直接 Transfer Gateway Example のサンプルを試してみると良いかもしれない...

ERC721コントラクトのセットアップ

ERC721トークンをイーサリアムからDAppチェーンへと移転するには、独自のERC721コントラクトが2つ必要になる。1つはイーサリアム上(メインネットのERC721)、もう1つはDAppチェーン上(DAPpチェーンのERC721) のものだ。

メインネットのERC721コントラクトは、トランスファーゲートウェイと連動させるために特別なことは何も必要としない。 しかし少しばかり簡単にメインネットゲートウェイへトークンを移転するには、下のdepositToGateway メソッドのようなものを追加してもよい:

pragma solidity ^0.4.24;

import "openzeppelin-solidity/contracts/token/ERC721/ERC721Token.sol";

contract MyAwesomeToken is ERC721Token("MyAwesomeToken", "MAT") {
    // Mainnet Gateway address
    address public gateway;

    constructor(address _gateway) public {
        gateway = _gateway;
    }

    function depositToGateway(uint tokenId) public {
        safeTransferFrom(msg.sender, gateway, tokenId);
    }

}

DAppChain ERC721コントラクトは、DAppChainゲートウェイがEthereumから移転されたトークンを生成できるよう、publicな mintToGateway メソッドを提供しなくてはならない:

pragma solidity ^0.4.24;

import "openzeppelin-solidity/contracts/token/ERC721/ERC721Token.sol";

/**
 * @title Full ERC721 Token for Loom DAppChains
 * This implementation includes all the required and some optional functionality of the ERC721
 * standard, it also contains some required functionality for Loom DAppChain compatiblity.
 */
contract MyAwesomeToken is ERC721Token {
    // DAppChainゲートウェイアドレス
    address public gateway;

    constructor(address _gateway) ERC721Token("MyAwesomeToken", "MAT") public {
        gateway = _gateway;
    }

    // DAppChainゲートウェイにより使用され、メインネットゲートウェイにデポジットされるトークンを生成する。
    function mintToGateway(uint256 _uid) public
    {
        require(msg.sender == gateway);
        _mint(gateway, _uid);
    }
}

DAppChainゲートウェイはまだ所有していないトークンの作成を試みる。そのため mintToGateway 関数を実装せずにトークンサプライを管理したければ、DAppChainゲートウェイへとトークンを事前に生成しておくことができる。

コントラクトに満足しているなら、Truffleを使ってイーサリアムとDAppチェーンにデプロイすることができる。 これについては loom-truffle-doc を参照のこと。

メインネットコントラクトをDAppチェーンコントラクトへマッピング

コントラクトをデプロイしたら、DAppチェーンゲートウェイにリクエストを送信してコントラクト間のマッピングを作成しなくてはならない。 トークンがメインネットのERC721コントラクトからメインネットゲートウェイへデポジットされたと通知されると、DAppチェーンゲートウェイはそれに一致するトークンをDAppチェーンのERC732コントラクト内に作成する (トークンがDAppチェーン上にすでに存在していない限り) 。 両コントラクトをデプロイした証明を提出できなければ、DAppチェーンゲートウェイはコントラクトのマッピング作成を拒否する。

メインネットのERC721をデプロイしたことを証明するには、署名を提出しなくてはならない。この署名は、コントラクトデプロイ時に使用したイーサリアムの秘密鍵を使ってメッセージに署名すると生成される。

DAppチェーンのERC721コントラクトをデプロイしたことを証明するには、DAppチェーンゲートウェイに送信されたリクエストに署名するだけでよく、これはコントラクトデプロイ時に使用したDAppチェーンの秘密鍵を使用して行う。DAppチェーンゲートウェイは、DAppチェーンコントラクトレジストリ内でコントラクト作成者を参照することで、コントラクトをデプロイしたリクエスト送信者を検証する。

DAppチェーンゲートウェイがコントラクトのマッピングリクエストを受け取ると、ゲートウェイOracleから検知されるまでにやや遅延がある。 ゲートウェイOracleは、誰が実際にコントラクトをデプロイしたのか、メインネットコントラクトのトランザクションを検索する。そして検索結果をDAppチェーンゲートウェイに送り返すと、マッピングリクエストは承認、もしくは却下のどちらかとなる。

DAppチェーンへのERC721トークン移転

アリスは、メインネット上トークンの取得を管理している。そして今、彼女は自身のDAppチェーンアカウントにそのトークンを移転しようとしている。 しかしその前に、彼女はAddress Mapperコントラクトにリクエストを送り、彼女のイーサリアムアカウントとDAppチェーンアカウント間のマッピングを作成しなくてはならない。 DAppチェーンゲートウェイと同じく、アリスが両アカウントの所有者であることの証明を提出できない場合Address Mapperはアカウントマッピングの作成を拒否する。

メインネットアカウントの所有を証明するには、アリスは署名を提出しなくてはならない。この署名は、アカウントと紐づけられたイーサリアム秘密鍵を使用して、メッセージに署名することで生成される。 そしてDAppチェーンアカウントの所有を証明するには、彼女はDAppチェーンアカウントに送信されたリクエストに署名するだけでよい。その際、彼女のアカウントと紐づけられたDAppチェーン秘密鍵を使用して署名を行う。 Address Mapperはリクエストを受け取るとすぐ、リクエストされたアカウントマッピングを作成する。するとアリスは彼女のイーサリアムアカウントとDAppチェーンアカウント間でトークン移転を開始することができる。

イーサリアムへのERC721トークンの移転

アリスはDAppチェーン上での用が済んだので、DAppチェーンアカウントからメインネットアカウントにトークンを移転したい。 まず彼女は、DAppチェーンゲートウェイへ承認を与え、それが移転したいトークン所有権を引き継げるようにしなくてはならない。これを行うには、DAppチェーンのERC721コントラクトへリクエストを送信する。

次に、アリスはDAppチェーンゲートウェイにリクエストを送り、トークン引き出しプロセスを開始しなくてはならない。 DAppチェーンゲートウェイはリクエストを受け取ると、アリスの引き出し保留中の記録を作成する。その後、ゲートウェイOracleが保留中の引き出しに署名するのを待つ。 わずかな遅延の後、ゲートウェイOracleは保留中の引き出しに署名し、DAppチェーンゲートウェイへとその署名を送信する。DAppチェーンゲートウェイは、アリスの保留中の引き出しに署名されたことを彼女に通知するため、イベントを送信する。

引き出しプロセスを完了するには、アリスは引き出しの署名(ゲートウェイOracleにより生成) をメインネットゲートウェイへ提出しなくてはならない。するとメインネットゲートウェイは、一致するトークンをアリスのメインネットアカウントへ移転する。

まとめ

これでトランスファーゲートウェイの仕組みについて基礎的な理解ができたはずだ。しかし実際のAPIについてはまだ何も説明していない。 まだチェックしていなければ、Transfer Gateway Example のプロジェクト例を見てみよう。これは loom-js により提供されるトランスファーゲートウェイを使用して構築されている。